これまで市民ランナーとして日本全国のレースに毎週の様に出場し、マラソンを通して地域と関わってきた川内選手。現在はプロランナーとなり「マラソンキャラバン」という取り組みを通して地域の魅力発信などもされています。
前編では、スポーツとふるさと納税の可能性について元公務員という視点で、貴重な意見を伺うことができました。
後編では、選手が感じる応援の力や、川内選手が行っている地域での取り組みをお話しいただきました。
応援の力は選手に届く
ーーー先日、ふるスポ!と鹿児島県大崎町の取り組みでは、無観客開催となった陸上大会で、応援を選手に届けながら、ふるさと納税の返礼品をシェアしようといった取り組みを行いました。川内選手は、応援の大切さについて感じていることはありますか?
川内優輝 選手(以下、川内):声で応援してもらえることはすごく元気が出ます。「頑張れ」だけでなく「前と何秒差!」という的確な応援をいただけると、”より頑張らなきゃっ!”と思えるのですが、今はコロナの影響で大声での応援が難しくなっていますよね。そんな時は横断幕などで“●●選手頑張れ!”とか書かれているとすごく目について頑張れるんです。
例えば、ふるさと納税の仕組みの中で会場やコース上の横断幕に「メッセージを掲げる権利」を提供すれば、大会の支援に繋がり、“コロナだから現地には行けないけど応援しているよ”と応援したい人の気持ちを形にして届けることができるので、面白いのではと思いますね!
競技者にとっても、観客はいないけどどこかで見てくれている人たちがいるということをそういったメッセージを見ることで、無観客でも無観客じゃない、応援してくれている人とつながっている気持ちになると思います。
私の場合は、その開催地域のOBの方などが、全国から集まった寄せ書きの横断幕を持って応援に駆けつけてくれています。メッセージが入っている横断幕が北海道や鹿児島、大阪など全国で掲げられて、その横断幕を見ると「あっ、また応援してくれてる」と力になりますね。
横断幕も一緒に日本全国の旅をしてます(笑)
ギネス記録を狙った「スーツ ユウキ」ランナーで地元の久喜を盛り上げる
ーーー「マラソンキャラバン」という取り組みで地域のPRにも力を入れてらっしゃいますが、過去に、久喜マラソン大会でスーツの仮装をして走られていました。何か理由はあったのですか?
川内: 「マラソンキャラバン」は所属先のあいおいニッセイ同和損害保険の全国の支店・支社のみなさんと取り組んでいます。
一時期、マラソンのギネス記録を調べている中で、いろんなギネス記録があり、消防士の格好をして走ったり、重りをつけて走ったりといろいろありました。
その中で、スーツのギネス記録を見たときに、自分も普段から駅までスーツで走ることもあり、”これくらいのタイムならやればいけるんじゃないか”と思っていたことがあったんです。
久喜マラソン開催地の久喜市は、「らき☆すた」というアニメの聖地になった関係で、コスプレと「イタ車」の町として町おこしをしていました。だったら、この機会にギネス記録で見ていたスーツ姿で挑戦してもいいのではないかと考えたのがキッカケですね。
公認レースではないのでギネス記録更新とはなりませんでしたが、スーツでのハーフマラソン記録を更新すると、世界各国のメディアで翻訳され、
“Suit Yuki”
と、とても大きな反響があり、多くの海外メディアで取り上げられました。その後はパンダや忍者など、毎年違う仮装で地元を盛り上げるために走っています。笑
A Japanese Runner Unofficially Broke the Record for Fastest Half Marathon Run in a Suit
ふるさと納税は選手がすべき
ーーー改めて、地域や大会をふるさと納税で応援できる、という可能性についてどう考えますか?
川内:クラウドファンディングや募金だと、金額の面や強い共感や関係性がないとためらう人も多いのではないかと思います。一方、ふるさと納税であれば、地域の魅力的な特産品を楽しめたり、自己負担2,000円で寄附控除になったりと、やる動機としてハードルが低いと思います。
今は応援している人たちが選手を支えるという考え方が多いですが、選手自身が自分のお世話になった地域・競技に対してふるさと納税を通して応援するという発想がもっともっと広まっていくと良いのではと思います。
選手たちに、ふるさと納税の制度のメリットや目的をしっかり伝えれば、「税金が控除になって、かつ自分がお世話になった地域や競技の支援になるなら、やっても良いかな?」と思う選手たちはいると思います。
ーーーなるほど…その視点はなかったです!
例えば、長野県東御(とうみ)市で合宿をしている選手たちは、支えてもらっている地域を、逆にふるさと納税で支えるという形も必要だと思います。
私も、先日合宿で利用させていただき東御のことを調べたら、練習中に目にした施設の支援ができることを知って、しかも合宿の帰りによった乳製品や美味しいピザのお店の返礼品がもらえるということで応援したり、過去出場したことのある与那国一周マラソンの支援事業を応援したり、釧路は毎年長期合宿しているのでふるさと納税を通じて応援しています。
これまでお世話になった地域や、今回インタビューのキッカケである鹿児島県大崎町などもそうですがスポーツで頑張っている様々な地域を応援したいと考えています。
今後は、選手に対して、
「あなたの好きな地域」
「あなたの応援する競技」
「あなたのお世話になっている合宿地」
の応援がふるさと納税でできますよと、もっともっと伝わっていけばスポーツとふるさと納税という組み合わせは、 スポーツに取り組む地域の希望になる可能性を秘めていると感じています。
選手自身がふるさと納税を利用し、応援する人と選手自身がイベントや地域を支えるという形で、スポーツとふるさと納税の組み合わせを、さらに素晴らしいものにできると思います。そんな凄まじい可能性を十分に秘めていると僕は思っています。
ーーー本日は、ありがとうございました!応援しております!!!
川内:こちらこそ、素敵な取り組みを応援しております!!
(お話を聞いて)
前編・後編通し、様々な視点で物事を捉えている川内選手とお話をすることで、改めてスポーツの持つ価値、スポーツと地域・ふるさと納税の可能性を感じることができました。
2021年4月現在、コロナ禍で多くの大会が中止、そして廃止のニュースを見るようになりました。
これまで多くの人たちを笑顔にしてきたスポーツに制限が生まれてきています。
制限のある中でもスポーツを楽しむ方々、スポーツビジネスに関わる皆さんはスポーツの持つ価値を信じ、前向きに取り組んでいくしかありません。
私自身もこの時期を乗り越え、より大きくジャンプする日が来ると信じてスポーツによる地域活性、スポーツの価値向上に取り組んでいきたいと思いました。
川内優輝さん、ありがとうございました!!
【お知らせ】
ふるスポ!は、日本各地のスポーツに取り組む地域を応援するWEBサイトです。
現在、地域のスポーツ資産を活かして、スポーツのまちづくりに取り組みたいとお考えの自治体パートナーを募集中です。
スポーツは、人を笑顔にし感動させ、地域の課題解決の力になると信じて止みません。共に歩みましょう。
▼お問い合わせはこちらから▼
ープロフィールー
川内 優輝 Yuki Kawauchi
競技:陸上(長距離)
生年月日:1987年3月5日 出身地:東京都世田谷区
所属:あいおいニッセイ同和損保(株)
スポンサー:アシックスジャパン(株)
努力と工夫で日本陸上界の常識を覆すアスリート
陸上歴27年。砂原小1年時に陸上を始め、鷲宮中、春日部東高、学習院大と 陸上を続け、箱根駅伝にも関東学連選抜6区として2度出場。2009年に埼玉 県庁に入庁後もフルタイム勤務の市民ランナーとして競技を続け、2019年3 月末に埼玉県庁を退職し、プロランナーに転身。これまでに招待選手やゲス トランナーとして250回以上(一般参加等も含めると600回以上)のレース に出場。フルマラソンはすべてサブ2.5及び30位以内で完走しており、サブ 10の世界最短間隔記録(中13日)や日本人最多記録(14回)なども樹立し ている。また、フルマラソンのサブ12~サブ20の1分刻みの達成回数は全て 世界一。2020年12月防府読売マラソンにおいてサブ20・100回を達成し、 ギネス世界記録に認定。2021年2月びわ湖毎日マラソンでは2時間7分台の 記録で8年ぶりに自己記録を更新。座右の銘は「現状打破」。