2021年04月16日(金) インタビュー

【川内優輝選手特別インタビュー(前編)】ースポーツとふるさと納税の可能性ー


【川内優輝選手特別インタビュー(前編)】ースポーツとふるさと納税の可能性ー

2021年2月に行われた「びわ湖毎日マラソン」にてフルマラソン2時間20分以内でのゴール「サブ20」が100回目に達し、ギネス世界記録として認定された川内優輝選手。また、今回の2時間7分27秒という記録は8年ぶりの自己ベスト更新となりました。


これまで市民ランナーとして日本全国のレースに毎週の様に出場し、マラソンを通して地域と関わってきた川内選手。現在はプロランナーとなり「マラソンキャラバン」という取り組みを通して地域の魅力発信などもされています。


これからの地域との関わり方や、スポーツ×ふるさと納税を活用して、地域のマラソン大会やスポーツのまちづくりへの貢献の可能性について伺いました。



今回お話を伺うきっかけとなったのは、このツイートでした。



ふるスポ!が行っている鹿児島県大崎町の「陸上の聖地化」を応援するプロジェクトのニュースを川内選手がRTしてくださり、是非競技以外の部分についても、プロランナーとしてどのようなご意見をお持ちなのか詳しく伺いたいと思い、オンラインでのインタビューを受けていただきました。

コロナ禍で多くの大会が資金難に。思い出の大会がなくなる・・・

ーーー本日はよろしくお願いします。
はじめに、インタビューを引き受けてくださったのはどうしてですか?

川内優輝 選手(以下、川内):私自身がふるさと納税を利用していることもあるのですが、自分自身が様々なマラソン大会に出てきましたので、市の運営が厳しくなり大会への補助金が減って規模を縮小したり、廃止が決まったりと聞くことも増えてきました。また、今は大丈夫でも東京オリンピックが終わった後、スポーツ関連の予算が減ることで大会の存続が危うくなることも・・・とチラホラ聞くことがありました…。

ーーー確かに、いくつかのマラソン大会は廃止というニュースを目にしました。


川内:大会の運営は、国や市からの補助金だけでは厳しい状態だと思うんです。しかし、ふるさと納税で資金を集めていけば、今後も長く存続していくことに繋がると思いますし、ふるさと納税ならクラウドファンディングや通常の寄付よりは、2,000円の自己負担を除く金額が税控除されるので、皆さんが応援しやすいのがあると思いますね。


例えば、自分が出たマラソン大会であったり、自分のふるさとのスポーツであったり、自分に直接関係ない地域でも取り組んでいるスポーツで面白いことやっているなと思ったら、その地域を応援することが可能になりますよね。


ふるさと納税とスポーツの組み合わせはいろんな可能性を秘めていて、ふるスポ!は興味深い取り組みだなと思ったので取材を受けさせていただきました。

川内選手(左)とふるスポ!代表 赤嶺(右)

コロナ禍での陸上競技の機会提供の改善

ーーー都内の屋外競技場の閉鎖について発信されていることもありました。若手の育成の場や機会について思うことはありますか?

川内: 今はコロナの影響で市民マラソンだけでなく、学生の大会なども中止となり、活躍の場が奪われているように感じています。
屋外の競技なのに、リスクばかりを気にして中止にしてしまう今の風潮というのはちょっと寂しいですね。



陸上に関しては昨年の夏頃から一部大会が復活しています。クラスターも発生していないのですが、どんなに対策をしていても競技場が閉鎖されたり、道路の使用の許可が下りないことには開催ができないので、そういった対策の面でおかしいところの改善はしてほしいと思います。

スポーツ×ふるさと納税の波及効果

ーーー国内約40都道府県のマラソン大会に出場されてきた川内選手から見た、地域のスポーツイベントの価値は何だと思われますか?

川内:大都市マラソンだけでなく、地域で開催されている数百人から千人の大会でも、30回〜50回と開催している歴史あるとても魅力的な大会はたくさんあります。そういった大会が、メインスポンサーの数100万円の契約が打ち切られて苦しい、開催自治体から補助金が100万円減らされて運営が厳しいという話を聞くことがあります。


でも、大都市の大会の様に何億という費用が足りないということではなく、数100万円という単位であれば、うまく周知してその土地・大会を応援してくれるファンの人を増やすことで、存続ができるのではないかと思います。


一方、この様に資金面で問題を抱えていると、開催自治体から、

「このスポーツイベントやっている意味あるの?」

「このスポーツイベント、全然観光振興につながらないよね?」

と言われる可能性があります。

ーーー確かにスポーツイベント単体で見るとそう判断されることが出てきてもおかしくないですね。

川内:その時に、ふるさと納税で資金面の問題解決はもちろん、熱心なファンが関係人口となり、自分自身がこの大会・土地を支えているんだという気持ちになれば、純粋にスポーツイベントに参加するだけでなく”関わっている”という意識を醸成することでその土地に愛着が湧いてくると思います。


この様にして地域のスポーツファンを増やしていくことは、そのふるさと納税してくれた1人だけではなく「あそこの村のあの大会、ふるさと納税で支援しているんだよ」と言うと、私も応援してあげようかなと輪が広がっていくと思います。
また、直接的なふるさと納税に繋がらなくても、その1人のファンが応援するぐらい良い大会と聞けば、「今度近くに寄ったら行ってみようかな」となりますよね。


「ファンを増やす」ということは、その1人ではなく、その周りの5人10人に波及していく。特に自分自身の思い入れが強いほど「あそこは良いよね」と良いイメージの情報を広げてくれるので、これは単純にお金に換算できないすごいイメージアップ効果があると思います。


また、その様な視点で考えると、スポーツイベントが広報的な面で価値のあるものになる。そうなると、行政内で、ふるさと納税を管轄している課とスポーツ課や観光課など、 課所を横断したコラボレーション ができるので、そう言った意味でも、スポーツとふるさと納税の関係は、すごく価値があると思います。


「元公務員の視点から言わさせていただきました。」

ーーーすごく視点が鋭いと思ったのですが、元公務員ということをすっかり忘れていました!!!笑

川内:そういった意味でも今回はインタビューに参加させていただきました!笑

スポーツ分野でふるさと納税の活用が進み、観光・スポーツ・ふるさと納税それぞれの分野で連携した取り組みになることで、より良い相乗効果につながる可能性があると思いますし、そういった意味でもこの取り組みは、期待している以上の効果を生み出す地域も出てくるのではと思います!

笑いながらも強く語って頂いた川内選手

ーーーそんな風に言っていただき、今日は良い夢が見れそうです。笑

(お話を聞いて)

地域にスポーツがある価値、スポーツとふるさと納税の掛け算で生まれる新しい相乗効果を改めて感じることができました。
自治体とスポーツのコラボレーションはもちろん、自治体内でのコラボレーションが実現することでスポーツが地域に貢献していく、そうすることでスポーツの価値はもっともっと高めていける可能性があるのではないかと強く感じました。


後編では、世界中で川内選手が話題になったある取り組みや、選手視点で考えるふるさと納税の活用法についてお話しいただきました。



【お知らせ】
ふるスポ!は、地域のスポーツ資産を活かして、スポーツのまちづくりに取り組みたいとお考えの自治体パートナーを募集中です。

スポーツは、人を笑顔にし感動させ、地域の課題解決の力になると信じて止みません。共に歩みましょう。

また、スポーツに取り組むまちの紹介もしています。是非知って、応援してください。

▼こちらから▼



後編に続く

ープロフィールー

川内 優輝 Yuki Kawauchi
競技:陸上(長距離)
生年月日:1987年3月5日 出身地:東京都世田谷区
所属:あいおいニッセイ同和損保(株)
スポンサー:アシックスジャパン(株)

努力と工夫で日本陸上界の常識を覆すアスリート
陸上歴27年。砂原小1年時に陸上を始め、鷲宮中、春日部東高、学習院大と 陸上を続け、箱根駅伝にも関東学連選抜6区として2度出場。2009年に埼玉 県庁に入庁後もフルタイム勤務の市民ランナーとして競技を続け、2019年3 月末に埼玉県庁を退職し、プロランナーに転身。これまでに招待選手やゲス トランナーとして250回以上(一般参加等も含めると600回以上)のレース に出場。フルマラソンはすべてサブ2.5及び30位以内で完走しており、サブ 10の世界最短間隔記録(中13日)や日本人最多記録(14回)なども樹立し ている。また、フルマラソンのサブ12~サブ20の1分刻みの達成回数は全て 世界一。2020年12月防府読売マラソンにおいてサブ20・100回を達成し、 ギネス世界記録に認定。2021年2月びわ湖毎日マラソンでは2時間7分台の 記録で8年ぶりに自己記録を更新。座右の銘は「現状打破」。


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