2021年06月23日(水) インタビュー

栃木の「じてんしゃのまちづくり」は、東京の街を自転車で走って始まった ー那須高原ロングライドができるまでー


栃木の「じてんしゃのまちづくり」は、東京の街を自転車で走って始まった ー那須高原ロングライドができるまでー


2019年には3,000人近くのサイクリストが参加した、「那須高原ロングライド」大会。


今や栃木県は「じてんしゃのまち」として有名になりましたが、その全ての始まりは那須町で始まった有志の取り組みでした。


なぜ那須高原ロングライドを始めたのか?那須町でどんな変化が起こったのか?大会発起人のお一人である、高根沢武一さんにお話を伺いました。

※2022年6月8日追記。
2022年度は、2022年9月4日(日)に開催が決定!

※2022年7月9日追記。

エントリー開始は、2022年7月9日20時!



ふるスポ!は、今年も那須町のスポーツや文化に活用されるふるさと納税という形で一緒に募集させていただきます。

今年は、ブリッツェン・ブラーゼンと一緒に那須のまちを走れる
「もうひとつのロングライド」枠や、
那須町の宿泊券をセットにした出走権など、
参加者の皆様に那須を楽しんでいただけるような返礼品もご用意しました。

エントリーは、明日7/9土曜日の20時からです。

▼ふるさと納税のお申し込み▼


●那須高原ロングライドの始まり

那須高原ロングライドが始まったのは、東日本大震災の爪痕が残る2011年でした。那須町でも当時、全壊の住宅があったり、体育館を避難所にしたり、道路にヒビが入るなどの被害が出ました。最後には放射能汚染数値が高い「人が住めないまち」という風評被害までもありました。


大会の発起人である栃木プロジェクトプロの高根沢 武一さんは、そんな中でも那須町を盛り上げようと2011年7月、初めて那須高原ロングライド大会を開催しました。

大会発起人 栃木プロジェクトプロの高根沢 武一さん


―――なぜ那須町でこのような自転車大会を始めようと思ったのですか?

高根沢:地域の魅力で新たな那須のファンを作りたいと考えていました。元々、自転車が好きで、栃木県内のカメラマンの仲間と一緒に、自転車を使って那須のエリアを盛り上げることができないか?と相談していました。



そこで、試しに二人で那須を走ってみたら自転車でしか気付くことのできない新しいまちの魅力に出会い、小さな旅ができることに気付くことができたのです。

●きっかけは、東京の街を自転車で走って気付いた

高根沢:大会開催の勉強のため、そして、私たちが考える那須の魅力が正しいものであることを自身で証明するため、2010年「東京シティサイクリング」大会に出ました。東京都庁をスタートして神宮外苑までの40kmのコースを走る大会です。

40km走ったけれど、足は疲れなかった。

疲れたのは「指」でした。

東京では、300m走っては信号で止まる。また300m走っては、信号で止まる。ブレーキの回数がすごく多いことに気付きました。



僕らは

「この人たちを那須に連れて来た時に5km先まで信号がない。那須のまちを走ってもらえたら絶対に喜んでもらえる」

と確信しました。

東京の街を自転車で走ってみて、那須にしか無いものに気付くことができたのです。

信号が全くない景色。サイクリストはここでしか体験できない価値を味わう


●初回大会の開催

2011年、初回大会の開催に向けて準備している中、東日本大震災がおきました。

「那須の魅力をサイクリングで」とは言ったものの、まちは大打撃を受けるなか、なんとか実現しようと観光協会・スポーツ振興・歴史文化など様々なステイクホルダーの協力や理解を得ながら開催にこぎつけました。

参加者数は、1年目が800人。2年目が1500人。3年目が2000人。5年目で3000名。

今や、全国4番目の集客人数で、日本一エントリーが難しい大会と言われるような大会になりました。

那須高原ロングライド出走者との記念撮影



―――どんな風にして、周りの人を巻き込み、地域の人たちの本気度を引き出したのですか?

高根沢:まずは大会を創る仲間たちから「共感」を得ることが必要だと感じています。毎回仲間に会うたびに「やろうね」と言い続けました。そして、地域の人たちにも同様に「共感」を得る必要があると思います。

今では、地域の人たち自身も自転車を乗る人が増えてきて、体にもいい、乗ることで小さな旅ができる。新しい楽しみも生まれています。また、大会当日には沿道で、サイクリストとの交流も生まれていて、一つの風物詩になってきたなと感じています。

●那須高原ロングライドの特徴

―――那須高原ロングライドの特徴を教えてください

高根沢:「地域の資源と地域の暖かさによる新しい観光資源を作る」ということをコンセプトにしています。

地域の魅力は、人の暖かさなどを通して生まれます。

例えば、レスキュータクシー(走れなくなった人をタクシーでピックアップしてくれる)という取り組みが生まれ、その他にも、地域の人が好意で浴衣姿でサイクリストを迎えてくれたり、疲れたサイクリストにエイドでおしぼりを渡してくれたり、全て地域の方が自発的に行ってくれました。

また、スタート会場には3000人の全てのサイクリストが利用できるバイクラックを設けて、サイクリストの相棒である自転車を地べたに置かせることはしないよう気を配っています。

極めつけは、17箇所あるエイドステーションです。走ったのに太っちゃうなんていう声も聞くことがあるほどです。

こんな取り組みを積み重ねて、「日本一のおもてなし」を目指しています。

サイクリストに楽しんでもらうために地域の方も協力
那須の名産品がたくさん食べれる!

●那須高原ロングライドができて起こった変化

―――那須高原ロングライドが開催されてから、自転車のまちづくりとしての変化を教えてください。

高根沢:まず、開催翌年に、プロロードレースチーム那須ブラーゼンが誕生しました。

その後、まちに、全日本自転車競技選手権大会を誘致し、大会を見るために全国から4万人が集まり、2022年に開催される、栃木国体のロードレースのコースも那須町が選ばれました。常設のサイクルピットが200箇所でき、まちみんながサイクリストをおもてなしする風潮ができてきました。

そして、ツールド栃木の開催、栃木県内各所でクリテリウム大会の開催など、自転車のまちづくりが那須のエリアを超えてどんどん広まっていきました。

那須高原ロングライドがきっかけとなり、プロロードレースJプロツアーも那須で開催

那須町で開催された大会が、栃木県内全域に広まる自転車のまちづくりのスタートになっています。

また、サイクリストたちには、この大会に参加することで新しい変化が起こっています。

それは、過去大会に出走したサイクリストが、裏方に回り、ボランティアに参加してくれる人が多くなっていることです。

「ボランティアの立場になり、大会の想いを知ることで、なんでこの大会がいいか、自転車に乗っててよかったなと思う瞬間がある。」ということを聞くことがありました。

そんな活動を続けてくれる方々と接して「まちづくりは人づくり」だなと感じています。

●これからの那須高原ロングライド

―――現在、約3,000名の方が参加する大きな大会になりましたが、今後大会をどんな風に育てていきたいとお考えですか?

高根沢:取り組みとしては、現在、一市二町を跨いで開催している大会ですが、2021年からは、福島県の白河エリアもコースに加え、白河ラーメンを楽しめる「白河ラーメン65」というコースを新設する予定です。

2021年.那須高原ロングライド大会は10回目を迎えます。改めて初心に還り、那須やその周辺エリアの魅力をサイクリングを通して伝えていけたらと考えています。

また、今後、地域活性という意味では、地域住民・行政・民間(企業)三方よしを目指し、目に見えて地元に還元されるよう、滞在や関係人口につながるような取り組みもできたらと考えています。

そこには、自転車だけじゃなく、歴史・文化や、音楽などシナジー が生まれてくるかもしれませんね。

そのためには、ますますみんなに「共感」していただき、共創して行かないとできないと考えています。

都市部になくて那須にあるものはいっぱいある。無い物ねだりではなく良さを生かした取り組みを行っていきたいと思います。

ーーーコロナで苦しい中ですが、サイクリストの光となるよう応援しています!!!ふるスポ!も一緒に前進していきます。


この記事を書いた人:赤嶺 健(スポーツ・ローカル・アクト株式会社)


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